レンタカー業界にみる構造変革

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レンタカー業界にみる構造変革

レンタカーは世界的に構造変革を経験しています。

Avis(Avis Budget Group)とHertz(The Hertz Corporation)は、2020年以降数度にわたって赤字転落を経験しています。その要因は単一ではなく、マクロ経済要因と業界特有の構造課題、および企業固有の経営判断ミスが複合的に絡み合っています。

🔍 Hertz・Avisが赤字転落した主な理由

1. 新型コロナウイルスによる旅行需要の崩壊(2020〜2021)

  • 移動制限・外出自粛によりレンタカーの利用需要が急減。
  • 特に空港立地に依存する事業構造だったため、国際線・観光需要の消失が致命傷に。
  • Hertzは2020年5月に米国でチャプター11(連邦破産法第11章)適用を申請し、一時的に事実上破綻。

2. 車両過剰保有と資産流動化の遅れ

  • 不況による需要減に応じてフリート(車両台数)を減らす必要があったが、中古車市場が一時的に低迷し車両売却による損失が発生。
  • Hertzは大量のリース契約やローンで車両を保有していたため、固定費が重く損失が拡大。

3. 固定費構造と店舗依存型オペレーション

  • 人件費・店舗運営コスト・保険コストなどが高止まり。
  • 一方、競合(TuroやGetaroundなどP2Pカーシェア)の台頭で低コストモデルが注目され、従来型企業の競争力が低下。

🏦 Hertz破綻の具体的経緯(2020)

時期イベント内容
2020年3月パンデミックで旅行需要が激減
2020年4月米国航空会社に続き、レンタカーの予約キャンセルが急増
2020年5月Hertzが負債約190億ドルを抱え、チャプター11を申請
2021年6月Knighthead Capitalなどからの支援で再建完了、再上場
その後中古車価格の上昇と旅行需要の回復で黒字転換(2022)も、再びコスト増加で業績悪化(2023以降)

🚗 Avisも2020年に赤字

Avis Budget GroupはHertzほど大規模な破綻には至らなかったものの、2020年度に一時的赤字へ:

  • 2020年は純損失6億8700万ドル(前年は純利益3億4000万ドル)。
  • 原因は同様にパンデミックによる売上激減と減損処理。
  • ただし、コストカットや車両売却のスピードが早く、2021年以降は急回復。

📉 その後の課題(2023〜2024)

1. EV戦略の失敗(特にHertz)

  • HertzはTeslaなどのEV10万台導入計画を打ち出したが、実際にはEV利用者の満足度が低く、維持コスト・事故率の高さ・充電インフラの未整備で多くのEVを早期に売却する羽目に(2024年)。
  • これにより、数億ドル規模の損失が発生。

2. インフレと金利上昇

  • 調達金利上昇により、車両調達コスト・借入コストが上昇。
  • 保険料の上昇(特にEV)は財務負担に。

📊 財務指標の変遷(参考)

年度Avis純利益Hertz純利益コメント
2019約$400M約$80M安定黒字
2020−$687M−$1.7Bコロナショック
2021約$1.3B約$500M回復
2022約$2.8B約$2.1B中古車価格高騰と需要回復で一時好調
2023減益傾向再び赤字EV戦略と金利コストで打撃

✅ 赤字の要因分類

分類内容
外部要因パンデミック、金利上昇、中古車価格変動、保険料高騰
構造要因空港依存モデル、固定費構造、フリート過剰保有、再販リスク
戦略ミスEV導入の失敗、P2Pとの競争対応不足、ユーザー体験への投資不足

世界の主要レンタカー売上

順位企業名売上高コメント
1Zhongsheng Group中国$23.03Bディーラー主力、販売とのシナジーあり
2Inchcape英国$11.62B輸入車販売との連携が強い
3Avis Budget Group米国$11.20Bグローバル対応、高価格帯
4Hertz米国$8.78B破産後の再構築中でも成長
5Localizaブラジル$6.76B新興国の需要依存高い
6Sixtドイツ$4.40Bプレミアム志向強い
7Zigup英国$2.28Bモビリティ系スタートアップ
8トヨタレンタリース日本$1Bただしリースや中古車売買もあり、レンタカーは収益の主力ではない